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​「ほんのひと言で」


僕は「デシェンヌ型筋ジストロフィー症」という病気を抱えています。10年ほど入院生活を過ごしています。

 

この病気は、遺伝子異常によって筋肉を作り出せなくなります。呼吸する力、心臓を動かす力、全身を動かす力が落ちていきます。僕は24時間、人工呼吸器を使っています。とても大変ですが、毎日を大事にして生きています。

現在の医学では治療する方法はありません。痛いところや苦しいところは、薬を使ったりリハビリをしたりして、和らげるしかありません。とても不幸な難病ですが、神様や仏様から何かしらの意味があって与えられたと思っています。...

それでも変えることのできない現実、生きることの葛藤に苛まれることがあります。僕は人に心配を掛けたくないので、笑顔でいることが多いです。本当は心の奥で、辛い気持ちになることもあります。

とある日、僕は体調を崩しました。心臓がドキドキして苦しくなって、モニターから映る心電図が乱れていました。自分は大丈夫なのだろうか?死んでしまうのではないか?不安と恐怖で、頭がおかしくなりそうになりました。

そんな時、看護師さんが「大丈夫ですか。気に病まないで下さいね。」と声を掛けてくれました。カーテンが仕切られた、病室に光が差し込んだ瞬間でした。僕は独りで病気と闘っているわけではないことを知りました。

看護師さんをはじめとする医療スタッフが、隣にいてくれます。心配してくれたり、悩んでくれたり、お手伝いしてくれたりします。だからこそ、病気があっても頑張れます。僕は気持ちの余裕が無くなると、周りが見えなくなります。看護師さんのほんのひと言で、大事なことを取り戻せます。

病気があるけれども、嫌なことがあるけれども、人から支えてもらえること。人の役に立てること。人を愛せること。自然に触れられること。その当たり前に感謝して生きようと思いました。

僕も含めてみなさんもおそらく100年後には、存在しないでしょう。かけがえのない命を自分のために使い、好きなことに使い、人生という物語を綴れることが生きている喜びだと思います。僕は病気と付き合いながら、生きていきます。

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